【新コース】マインドフル・ペアレンティング 8週間コース

マインドフルペアレンティングとは?

マインドフルペアレンティング(Mindful Parenting)は、親が「今この瞬間」に意識を向け、自分自身と子どもに丁寧に向き合うことを学ぶ、8週間のマインドフルネス実践プログラムです。

日々の子育てにおいて生じるストレスや感情的な反応に対して、より落ち着きと優しさをもって対応できるようになることを目的としています。

スーザン・ボーゲルス(Susan Bögels)博士とその同僚たちによってオランダで開発されました。

スーザン・ボーゲルス博士は、アムステルダム大学教授として、家族のメンタルヘルス、中でもマインドフルネスを専門とされています。子どもと親のためのトレーニングと治療のための学術的なセンター、UvA Mindsの創設者でもあります。

なぜ開発されたのか

育児は本質的にストレスフル

人間の子どもは成熟するまでに長い時間がかかり、その間、親に大きな身体的・精神的・経済的な負担がかかります。本来、子育ては「ひとりではなく村全体で育てる」ような共同養育の文化の中で行われてきました。しかし現代社会では、こうした支えが少ない中で、親がすべてを背負う状況が一般的になっています。

さらに、親の感情調整システムは進化的に脅威に敏感に反応するようにできており、子どもの小さな変化や問題にも強く反応してしまう傾向があります。つまり私たちは、生物学的にも「ストレスを感じやすい親」として進化してきたのです。

特に育児がストレスになる要因

育児がストレスになるのには、さまざまな要因があります。

たとえば、子ども自身の心や身体の不調、親自身の慢性的なストレスや健康問題は、日常生活において大きな負担となります。
また、夫婦関係の不和や離婚後の新たな生活、兄弟間の葛藤、子どもの学習障害や発達の課題なども、親にとって大きな悩みの種となります。

さらに言えば、そもそも親になること自体が、人生における大きな変化であり、環境や役割、人間関係が一変する中で、自分の余裕を保つことは決して簡単ではありません。

ある研究では、「親のストレスが、子どもの自己申告および親による評価の両方で、子どものストレスの主な予測因子である」(Corbett etl, 2021)とされています。

マインドフル・ペアレンティングで目指すこと

子どものストレスに気づき、適切にケアすること

日常生活の中で、子どもはさまざまなストレスや不安を抱えています。しかしそのサインは、言葉ではなく、行動や態度の変化として現れることが多く、大人が見逃してしまうこともあります。
マインドフルネスを通して、子どもの表情や声のトーン、行動の背後にある「こころ」に気づく力を育てることで、必要なときにそっと寄り添い、安心を与える関わり方ができるようになります

親自身のストレスにも気づき、自分をケアすること

育児や家庭、仕事の中で、親自身もまた多くのストレスを抱えています。自分のストレスに気づかないままでいると、無意識のうちに子どもに怒りをぶつけたり、過保護になったりすることがあります。
このプログラムでは、親がまず「自分の内側の状態」に気づき、自分自身を思いやりとともにケアする力を養います。これにより、感情に振り回されず、落ち着いた心で子どもに向き合えるようになります。

自分の「内なる子ども」に気づくこと

私たちは、子どもを育てながら、自分が子どもだった頃の記憶や感情と無意識のうちに向き合っています。ときには、自分が親から受けた関わりや、満たされなかった思いが、現在の育児の中で再燃することもあります。
マインドフル・ペアレンティングでは、こうした「内なる子ども」の存在に気づき、理解し、癒していくことを通して、より自由で柔軟な育児スタイルを築くことを目指します。

科学的に実証された効果

本プログラムは、さまざまな研究に基づき、その効果が多数報告されています:

  • マインドフルペアレンティングプログラムの効果(臨床・非臨床環境):
    • 精神医療機関に紹介された親を対象とした研究では、9週間のマインドフルペアレンティングコースの後に、対象児の内に向けられた精神病理症状および外に向けられた精神病理症状が改善しました。これらの改善は追跡調査時にも維持されていました。(Bögels, 2014)
    • 同研究において、親自身の内に向けられた精神病理症状が改善し、外に向けられた精神病理症状がさらに改善しました。(Bögels, 2014)
    • 同研究において、親のストレス、ペアレンティング行動、コペアレンティング(子育てにおけるパートナーとの協力関係)が改善しましたが、夫婦関係には改善が見られませんでした。(Bögels, 2014)
    • 小児精神科の臨床環境で実施された8週間のマインドフルペアレンティングトレーニングにより、子どもおよび親の精神病理が有意に減少しました。(Meppelink, 2016)
    • 同トレーニングにより、マインドフルペアレンティングおよび一般的なマインドフルネスの気づきが有意に増加しました。(Meppelink, 2016)
    • 臨床環境と非臨床環境(親がペアレンティングのストレスや問題を経験している)の両方で実施されたマインドフルペアレンティングトレーニングは、親子の機能測定値(親のストレス、過剰反応性、マインドフルペアレンティング、パートナーシップ、親の幸福感、子どもの幸福感、行動の問題)の改善を示しました(効果量は小さいから中程度)。これらの改善はトレーニング後に観察されました。(Potharst, 2018)
  • マインドフルペアレンティングプログラムの効果予測因子:
    • 二次小児精神保健サービスを利用する親を対象とした研究では、マインドフルペアレンティングトレーニングの後に、ペアレンティングにおける経験的回避の変化が、子どもの内向性の問題の改善を部分的に予測しました。(Emerson, 2019)
    • 同研究において、ペアレンティングにおける経験的回避の変化とマインドフルペアレンティングの組み合わせが、子どもの注意力の問題の改善を完全に説明しました。(Emerson, 2019)
    • 同研究において、親の過剰反応性の変化が、子どもの外向性の問題の改善を完全に説明しました。(Emerson, 2019)
    • 臨床環境でのトレーニングにおいて、一般的なマインドフルネスの気づきの改善が、親の精神病理の減少を予測しました。(Meppelink, 2016)
    • 同トレーニングにおいて、マインドフルペアレンティングの改善が、子どもの精神病理の減少を予測しました。(Meppelink, 2016)
    • 臨床環境と非臨床環境の両方で、マインドフルペアレンティングの改善が、子どもの機能の改善と関連していました。(Potharst, 2018)
  • 親の性格的なマインドフルネスと幸福度の関連性:
    • 皮膚疾患(乾癬や湿疹)を持つ子どもの親を対象とした調査研究では、親の性格的なマインドフルネスのレベルが高いほど、親自身のストレス、抑うつ、不安、全般的なストレスのレベルが低いことと関連していました。(Heapy, 2021)
    • 同調査研究では、親の性格的なマインドフルネスのレベルが高いほど、親自身の生活の質が高いことと関連していました。(Heapy, 2021)
    • 同調査研究では、親の性格的なマインドフルネスのレベルが高いほど、皮膚疾患を持つ子どもの生活の質が高いことと関連していました。(Heapy, 2021)

こんな方におすすめ

  • 子育ての中でストレスやイライラを感じる方
  • 子どもの行動への反応に悩んでいる方
  • 「ちゃんと育てなきゃ」というプレッシャーに疲れている方
  • 子どもとの時間をもっと味わい深く過ごしたい方
  • 自分自身の心の余裕や安定を育みたい方
  • 教育・保育・医療など子どもに関わる支援職の方

プログラム内容(全8回)

このプログラムでは、以下のようなテーマに沿って、親自身の気づきと成長をサポートします:

  • オートパイロットの育児から目覚める
  • 初心の心で子どもを見る
  • 体を通じて育児の感覚に戻る
  • 反応ではなく応答を選ぶ
  • 育児における自動思考・スキーマの理解
  • 親子間の葛藤と修復
  • 愛と限界(境界線)を育む
  • マインドフルな育児の道を歩む(そして繰り返し始める)

本当に大切なのは「今、ここでの体験」

マインドフルペアレンティングでは、結果を急ぐ必要はありません。「実践すること」自体が、すでに子どもと自分にとっての、価値のある時間になります。親としての自分を受け入れ、子どもとの関係を育て直す、そんな時間を一緒に過ごしてみませんか。

コースに参加してみたい方はこちらより開講予定をご確認ください。

参考文献

  • Blythe A Corbett, Rachael A Muscatello, Mark E Klemencic, Jessica M Schwartzman (2021). The impact of COVID-19 on stress, anxiety, and coping in youth with and without autism and their parents
  • Emerson, L. M., Aktar, E., de Bruin, E., Potharst, E., & Bögels, S. (2019). Mindful Parenting in Secondary Child Mental Health
  • Bögels, S. M., Hellemans, J., van Deursen, S., Römer, M., & van der Meulen, R. (2014). Mindful Parenting in Mental Health Care
  • Heapy, C., Norman, P., Emerson, L.-M., Murphy, R., Bögels, S., & Thompson, A. R. (2021). Is Parental Mindfulness Associated with Quality of Life and Itch Intensity in Children with Psoriasis and Eczema and Well-being in Parents?
  • Meppelink, R., de Bruin, E. I., Wanders-Mulder, F. H., Vennik, C. J., & Bögels, S. M. (2016). Mindful Parenting Training in Child Psychiatric Settings
  • Potharst, E. S., Baartmans, J. M. D., & Bögels, S. M. (2018). Mindful Parenting Training in a Clinical Versus Non-Clinical Setting